故郷
掲載日:2015.01.15
「お父さん、幾つになった?」と聞く私にニッコリと笑って
「そうやねぇ..74歳になったかねぇ。」と応えた。
時には、40歳と応えることも有ると言う。
施設に父を訪ねるといつも定位置の椅子に座って、殆どうつむいてウトウト居眠り。
やっとの思いで父を笑わして笑顔の写真を撮った。
一見、認知症に見えない笑顔だけど、この写真を見ても自分だと中々判ってもらえなかった。
おふくろが丈夫な身体に育ててくれたので、こんなに元気で働ける。おふくろに感謝していると、何回も言っていた。
その想いの中の自分は、認知症で無く元気で働いている自分しか無いよう。
自分の居場所も認知してないけど、娘をまだ判ってくれていたことが、嬉しかった。
ちょっと、問題児だったのは母。
いつもと違う生活をしたり、精神的に刺激が有りすぎると幻覚が見えてくるらしい。
そういう母を遠く離れている娘は知らないで、義妹に任せたままだった。
離れているから姉さんを充てにしてもしょうがないという義妹の逞しい気持ちの持ち方に支えられて娘の私は何も知らないでいることを恥じた。
でも、やっぱり何の手助けにも成らない私。
冷酷にも思える自分。その気持ちと戦いながら再び弟夫婦に両親を頼んで故郷を離れた。