手のファンタジー
掲載日:2011.12.04
とおい、とおい記憶の底に父が仲間たちと楽器演奏をしている様子が、浮かんでくる。
現実だったのか、私の幻想なのかよく判らないくらいの記憶だが、我が家のお客様の部屋という部屋の隅に、蓄音機が有ったのは、確かな記憶だ。
親子が、川の字になって寝ていた枕元で、父はいつもハーモニカを吹いていた。
大人になって、父がヴァイオリンが上手だったという母の話を聞いて、兄弟でお金を貯めて父にプレゼントした事が、あった…そんな事もとおい記憶になってしまっている。
目の前に、我が家に有ったものよりは、もっと古いと思われる蓄音機が、ある。
手動でまわし、静かな音楽を聴いた。
心を乱すような激しい音率はなく、やさしい物静かな音色が、会場を包む。
音楽に合わせて、操り人形が、躍る。
そのあと、大井弘子さんの指人形劇が、始まった。
年配の華奢なお身体の持ち主で、その細い身体のどこにこの力が有るのだろうと思う指先までに力が、ピンと入っている。
それでいて、関節の一節一節を動かしてしなやかな動きを見せる。
幼いころの世界へ夢のファンタジーへと私を誘った。
初老に成った私が、幼い私を見つめてていた。
(今朝は、豪雪。除雪作業に忙しい朝を迎えた。)